村山孚は『史記の人間学』で司馬遷の『史記』を「人間学の百科事典」と称えていますが、その中から「二面的思考法」(物だけではなく、心だけでもない)を見てみましょう。

『史記』列伝の部はいわば人物の銘々伝だが、その第一巻は、精神主義の権化ともいうべき伯夷と叔斉の伝記である。(中略)その一方で、同じく列伝の末尾にある第六十九巻は、巨万の富をきずいた素封家たちの伝記にあてられており、「人間は生活にゆとりができてこそ、礼義とか名誉とかを知るようになる」と、物質の優位を強調している。
列伝の初めと終わりでこれを対比させたところに、司馬遷の二面思考的な配慮がある。

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