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三島由紀夫の遺作『豊饒の海』は『春の雪』『奔馬』『暁の寺』『天人五衰』の四巻から成り、謎の多い小説ですが、気になったことを少しずつ書いていこうと思います。
まず、『天人五衰』に二度登場する「黒いベレー帽の老人」を取り上げます。
一度目は本多透の手記で、雪の日に老人が本多邸の門前で野菜屑と黒い鳥の死骸を落とし、透がよく見ると黒い鳥の死骸は女の鬘のように見えたというもの。
二度目は本多繁邦が神宮外苑で覗きをしていた夜、覗かれていた老人が突然ナイフで女を刺して逃走し、繁邦が危うく犯人に間違われかけたというものです。
ウィキペディアを読むと、この老人が誰であるかは不明であるが、ヒッチコック監督の映画に監督自身が出演したように、作者の三島由紀夫自身であるという見解があるようです。ただ、この説だと年齢が合いません。小説の設定では一度目は1972年、二度目は1974年なので、三島が生き延びたとしても四十代後半です。二度目の老人は「六十代」と明記されています。
それでは、この老人は誰でしょうか。
私は『春の雪』の初めに出てくる「滝に落ちていた黒い犬」ではないかと思います。月修寺の門跡に弔われた後、松枝清顕の母・都志子は「何という果報な犬でございましょう。きっと来世は人間に生れ変ることでございましょうよ」と言いました。
老人は犬のように残飯をあさり、犬が噛みつくように女をナイフで襲います。つまらない人物ではありますが、前世からの因縁で本多繁邦や綾倉聡子の人生に関わったものと思われます。年齢も矛盾しません。
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