『仮面の告白』は三島由紀夫の自伝的な小説ですが、早く亡くなった妹の記述は僅かです。「私」が園子に恋しているのに気づいて「いつ結婚なさるの」と尋ねて「私」をぎくりとさせます。実際に亡くなる場面では
「妹が死んだ。私は自分が涙を流しうる人間でもあることを知って軽薄な安心を得た」
とだけ書かれています。
新潮文庫『ラディゲの死』の中に、1958年に発表された『朝顔』という短編が収められていますが、冒頭は
「私の妹は終戦の年の十一月に腸チフスで死んだ。享年十七歳である」
から始まり、妹「美津子」について詳しく書かれています。
『豊饒の海』との関連で見ると、霊魂に関する記述が注目されます。
「私は死者の霊魂に対していつも哀憐の情を寄せる。(中略)未開民族のあいだで動物たちがそれぞれ死んだ人間の霊のあらわれだと信じられている理由が私にはわかる」
「霊魂というものに、やはり生の形を与えないことには、私たちの想像の翼は羽搏かないのかもしれない」
ここには輪廻転生の思想の萌芽が見られるように思います。
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