『美しい星』で人類の滅亡を企む三人の男は、青葉城の展望台から仙台の夜景を眺めながら、来るべき核戦争を議論します。羽黒助教授は次のように発言します。
「集団の時代はもう終ったのだ。・・悪が孤独な詩のようになり、詩が孤独な悪のようになっているのが、現代の本当の状況なんだよ。みんなは集団化と画一化の果てに戦争がはじまるように思っているが、実は一人の個人の小さな詩から戦争がはじまるのが現代なんだよ」
1962年『美しい星』の出版直後、世界はキューバ危機に見舞われましたが、1983年にも危機がありました。竹内淳氏は『高校数学でわかる統計学』の中で書いています。
「1983年にソ連の防空システムは、アメリカから発射された複数の核ミサイルをとらえました。ソ連の戦略ロケット軍の責任者だったペトロフ中佐は個人の判断でそれをシステムの誤動作と断定しました。おかげで報復の核ミサイルは発射されず、世界は滅びずにすみました。中佐がどうして誤動作と判断したかというと、アメリカが全面核戦争をしかけてきたのであれば、数発の核ミサイルではなく、数百発の核ミサイルを撃つはずだと考えたからでした」
しかし、数百発の誤動作もあるかもしれません。
お読みいただき、ありがとうございますm(_ _)m