この章の冒頭で三島は「第二の記憶」という「ふしぎな本」を挙げ、アメリカの平凡な実業家が催眠術に親しみ、友人の細君にこれをかけて、19世紀初頭のアイルランドの小さな町に住んでいた前世の記憶へ辿り着かせた。もしこれが本当だとすると、催眠術という科学的方法を用いて、仏教の輪廻説を実証することになると書いています。ここにも三島の輪廻への関心が読み取れます。
三島が書いているように、現代は「催眠術の時代」です。
「きけば、このごろはテレビに「見えない広告」を入れるという技術ができたらしい。人の目に見えぬ程度の速度で、何度も何度も、「三島石鹸をぜひ!」「三島印チョコレートほどおいしいものはありません!」というような文字を流すと、一生けんめい野球のナイターを見ている人の頭の片隅に、しらずしらずの間に、「三島石鹸」や「三島印チョコレート」が刻み込まれ、さて明る日荒物屋や菓子屋の前をとおったときに、思わず足が立止って、「あのう、三島石鹸ほしいんですけど」と言ってしまうのだそうであります」
こうしたマスコミの洗脳はナチスなどと違って、選択の自由があるように偽装する分、始末が悪い。現代は三島の時代より、もっと悪化しているでしょうね。
三島は最後に「ネコはおそらくもっとも催眠術をかけにくい動物でしょう。そこで私もネコにならって、出来るかぎり冷淡薄情、無関心、自主独立、しかもお魚にありつくためだけに、可愛らしい声でニャアニャア啼いていることにしたいと思います」と結ぶのですが、もちろん三島はそんなことはしませんでした。
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