この章は「このごろでは小説家という人種は、ばかにエライものになりました」という文で始まります。「そこで私は小説家を尊敬するという病的心理を一つ一つ解明して行きたいと思います」と、三島は5人の女性の意見を並べます。
A子曰く、「だって小説家は野球選手や映画俳優とちがって、外国語もできるし、学問もあるんですもの。学者として尊敬できますわ」
B子曰く、「でも少なくとも小説家は知識人として尊敬できますわ」
C子曰く、「でも小説家は少なくとも人格者として尊敬できるんじゃないでしょうか」
D子曰く、「でも、小説家はみんな人生経験が豊富でしょう。だから未経験な私たちに人生の指標を与える人、人生相談の先生として、尊敬できる筈ですわ」
この4人への三島の回答は「へえ、そんなもんですかね(以下省略。以下同様)」「あんたは何の根拠があってそんなことを言うんです」「とんでもないまちがいです」「あんたもバカだね」と散々です。ところがE子は違います。
「私、小説家を才能の持主として尊敬するわ」
「それはあなたの勝手です。ギャアギャア啼きわめくけばけばしい羽色のオームを尊敬するのは、全くあなたの趣味の問題で、私の知ったことじゃありませんからね」
これを読むと、三島もバカではなかったように思えてきます。
お読みいただき、ありがとうございますm(_ _)m