1980年発行の講談社ブルーバックス『五次元の世界 現代科学とUFOをつなぐもの』(カール・ブランスタイン著、宮崎忠訳)は若い頃から残している本の一冊です。怪しげなタイトルに見えますが・・
著者はカリフォルニア大学の物理学者ですが、人類の歴史を考察し、その祖先の猿人が残忍な動物であったことを示して「人類の誕生は、汚れなき心で行われたのではありません」と強調します。「殺戮 この人間的なるもの」という節ではオーストラリアの詩人ケイス・ウォーカーの詩を引用します。
「深い椅子 電気暖房装置
これは 昨日からのもの。
しかし 森の 幾千万もの野営の火
これは わたしの血の中のもの。
過去は 過ぎ去ったとは だれもいえない。
現在は 時間のごく一部にすぎない。ごく一部に・・
わたしを造った人類の 長い年々にあっては。」
これを読むと、三島由紀夫の『暁の寺』二の一節が思い出されます。
「思えば民族のもっとも純粋な要素には必ず血の匂いがし、野蛮の影が射している筈だった。(中略)民族のもっとも生々しい純粋な魂は地下に隠れ、折々の噴火にその兇暴な力を揮って、ますます人の忌み怖れるところとなった」
人間の性(さが)は悲しいものですが、宇宙の進化に目的があるならば、ブランスタインが最終章で言うように「地球上における進化の過程が、有害物質や放射能であふれ命も絶えた惑星となって終結する」ようなことはあり得ないでしょう。ただ、この仮定が正しいかどうかは不明という他はありません。
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