聖書は世界的なベストセラーです。それに次いで多く読まれたのはユークリッドの『幾何学原論』だと言われますが、今日は旧約聖書の『創世記』に注目したいと思います。
高橋和夫は『スウェーデンボルグの思想』でスウェーデンボルグによる創世記の解釈を紹介しています。それに先立って次のような前置きがあります。

天地創成をめぐる聖書の記述は神的な霊感を吹き込まれて書かれた神のことばだという主張に対して、多くの異議が唱えられている。聖書の記述は地質学や進化論と矛盾するという説、その神話はバビロニアの創成神話の焼き直しにすぎないという説、さらには、文献批評によって聖書の歴史的検証を重んずる「高層批評」による原資料の寄せ集め説など、論争は絶えず、聖書の権威は揺らいできている。

この前置きは岩波文庫の『創世記』(関根正雄訳)の解説にも見られる一般的な見解ですが、高橋氏によるとスウェーデンボルグの解釈は全く違います。

彼によれば、「創世記」の作者たちは霊界と自然界とが全体的にも個別的にも照応することを熟知しており、(中略)神による宇宙や人類の創造という主題だけを扱おうとしたものではなく、もっと明確な宗教的意図のもとに書かれたものであるという。その意図とはつまり、一つは、生物学的な「ヒト」から霊的な「人間」へと新生してゆく人類の霊的な進化のプロセスの叙述であり、いま一つは、霊的な新生へと向かう個人の精神的な成長のプロセスの叙述である。

これは面白い解釈で、これが正しいとすれば、「その記述が進化論と一致するとかしないとかいう議論も意味がない」ということになります。高橋氏は深入りを避けていますが「スウェーデンボルグによれば、バベルの塔の神話を扱う「創世記」第11章までは、「創世記」の他の章から本質的に分離した、原聖書とも言うべき人類最古の宗教文書である」とのことです。
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