三島由紀夫の『鏡子の家』第五章、喫茶店「アカシヤ」での武井との論争に疲れて外に出た山形夏雄に、追ってきた舟木収が話しかけます。

「気にしないでいたまえ。武井はひたかくしにしているが、本当は朝鮮人だという話だ」
これはふしぎな啓示だった。夏雄はその昔、半島出身のマラソン選手が国際競技で日本の栄誉を担ったという話を思い出した。被圧迫民族の狂おしい肉体への執着と、その精力崇拝。
「へえ、そうだったのか」
夏雄にいつものやさしい微笑が蘇り、こんな発見が彼をすっかり安心させた。武井の思想はこれで彼と何の関わりもないものになった。武井は朝鮮人であり、夏雄は天使だったのだ。

この短い一節に、在日韓国・朝鮮人問題がよく出ています。それは「ひたかくしに」されねばならぬもの、まわりでコソコソと囁かれるべきもの。『鏡子の家』は1950年代、今から60年前の作品であるのに、この問題は全く改善されていないことに驚きと憤りを覚えます。
私が大学時代、カウンセリングを受けていた時(1980年代です)、在日朝鮮人の学生と知り合いました。私と違って筋骨逞しく、喧嘩が強そうでした。優しいところもありましたが、(彼が見るところの)「弱い、愚かな、劣った」ものを罵倒することに生きがいを見出しているように見えました。彼がいつも罵倒していたのが村上春樹とビートルズでした。
芸能界にも在日韓国・朝鮮人の方は多いようですが、たいていは「ひたかくしに」されるようです。和田アキ子さんは在日韓国人として生まれ、日本に帰化したことを公表していらっしゃいますが、これはむしろ例外です。
遠い古代はさておき、豊臣秀吉の朝鮮出兵の後、徳川家康は朝鮮との国交を回復しました。江戸時代は一貫して友好的な関係が保たれたのに、明治維新で一変しました。
李氏朝鮮は明と清に臣従していましたが、中国の一部になったわけではなく、あくまで中国と朝鮮は別の国でした。日本が日清戦争と日露戦争に勝った後、1910年に大韓帝国(1897年に改名した)を滅ぼし、完全に植民地にしてしまったのは何故か、いくら考えても不思議です。日英同盟を結んでいたイギリスがけしかけたのでしょうね。アジア人同士が未来永劫、憎み合うように仕向けたのでしょう。
かとうれいこさんが在日韓国・朝鮮人かどうかは分かりませんが、彼女は何度か韓国を訪れており、今年2月の平昌オリンピックの直前、ソウルに行かれたようです。(平昌には行かれなかったらしい)開会式でジョン・レノンの『イマジン』が流れましたが、どんな想いで聴かれたのでしょうね。私としては『イムジン河』も流してほしかったですが、原曲は北朝鮮のプロパガンダなので、やはりマズイかもしれません。『イマジン』は47年前、『イムジン河』は50~60年前の曲ですが、まだ懐メロではありません。
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