村上春樹の『1Q84』を一通り読みました。終わりまで読んで思ったのは、やはり健全?な作家だなということです。
三島由紀夫と共通する部分もあり、なるほどと思わせる終わり方ですが、その「なるほど」と思わせてしまうのが三島との決定的な相違です。三島の場合は最後の最後でそれまで積み上げてきた積木を崩してしまいますが、春樹はそんなことはしません。
料理、食べ物や服装の描写が多いことも目につきます。時代的な違いもあるでしょうが、三島は料理などは得意ではなかったように思われます。私もお湯を沸かす程度のことしかしていないので、春樹氏には感心してしまいます。
『1Q84』を読んで似ているなと思ったのは、フレドリック・ブラウンのSF小説『発狂した宇宙』(1949年)です。原題は"What Mad Universe"ということです。
『1Q84』では青豆雅美という変わった苗字の女主人公が首都高速道路の非常階段を降りて別の世界(月が二つある世界)に迷い込み、そこで多くの試練を経て小学校時代の恋人?だったもう一人の主人公の川奈天吾と再会します。この世界は天吾がゴーストライターとして書き直したある少女の小説の世界でしたが、最後に青豆と天吾は首都高速の非常階段を上ってその世界を抜け出します。そこは月は一つですが、元の世界と同じかどうかは曖昧なままです。
『発狂した宇宙』は出版当時は近未来だった1954年が舞台です。主人公のキース・ウィントンは独身で、SF雑誌の編集長ですが、宇宙ロケットの発射を取材中に爆発に巻き込まれ、別の世界に飛ばされます。そこでは地球は宇宙からの恐るべき侵略者、アルクトゥールス星人と激しい戦争を繰り広げていました。ウィントンは彼らのスパイと間違えられて追われる身になります。実はこの世界は、SFマニアでウィントンの雑誌の愛読者だった少年が夢想していた世界でした。そこでウィントンはアルクトゥールス星人の宇宙船に体当たりする特攻隊に志願し、再び爆発に巻き込まれて元の世界に戻ります。その世界は元の世界に似ていましたが、大きく違っていました。ウィントンは雑誌社の編集長ではなく社長で、美しい夫人と共に豪邸に住んでおり、めでたしめでたしの結末となります。
三島はSF好きでしたから恐らくこの作品は知っていたでしょうし、春樹も参考にしたのではないかと思います。
お読み頂き、ありがとうございますm(_ _)m