私は星占いで言うと射手座の生まれですが、現代の天文学では射手座は銀河系の中心方向に当たり、太陽の数百万倍の質量を持つブラックホールがあると言われています。射手座は西洋の星座ですが、古代の中国では射手座の一部の六つの星を小さなひしゃくに見立て、北の大熊座の「北斗七星」に対して「南斗六星」と呼びました。ただのひしゃくではなく、宗教的な意味付けも考えられました。野尻抱影の『星の神話・伝説』の射手座の項目では次のように解説されています。

中国では、南斗は寿命をつかさどり、北斗は死をつかさどると信じられていました。
魏の国に管ロ(変換できませんが、くるまへんに各という漢字です)という、天文や人相を見る名人があって、ある日、麦畑ではたらいていた子供の顔をみて、「ふびんだが、二十歳までは生きられまい」と、つぶやいて通りすぎました。びっくりした農夫の父が、あとを追って子供の命がのびる法を教えてくださいと嘆願しますと、管ロは「上等の酒一たると、シカのほし肉をもって、麦畑の南のはしにあるクワの大木のところに行ってみなさい。二人の仙人が碁をうっているから、なにもいわずにおじぎをして、それをすすめるのじゃよ」といいました。
農夫が行ってみると、はたして二人の仙人が碁をうっていたので、一生懸命に酒と肉をすすめました。一局すんではじめて農夫がいるのに気がつくと、北側にいた仙人は、目を怒らせてしかりつけました。しかし南側の仙人は、それをなだめてから寿命帳をしらべて、農夫の子の名を見つけると、「十九歳」とあったのを「九十」にひっくりかえしてくれました。
農夫が、よろこんで帰り、管ロに報告すると、「北側にいた仙人が北斗で、死をつかさどり、南側にいたのが南斗で、生をつかさどるのだ」といいました。そして、なにひとつお礼も受けずにたちさりました。

澁澤龍彦も『時間のパラドックスについて』の中でこの説話に触れています。将棋や碁やチェスというものは、明らかに時間のシンボルではないかと言うのです。
それはともかく、私としてはこの説話で、子供の寿命を延ばしたいのは父の農夫であって、子供の意思が分からないことは気になります。九十まで死ねなくなった子供は、今度は逆に北斗の仙人に寿命を短くしてくれと嘆願するかもしれません。読者の皆様はどう思われるでしょうか。
お読み頂き、ありがとうございますm(_ _)m