これは2000年に大修館書店から出た本です。国文学者は冷たいようですが、日本天文学会理事長の尾崎洋二氏が序文を寄せています。
私も大学で国文学科にいましたが、年度末のレポートで草下英明の『建礼門院右京大夫の見た星空』という論文を取り上げたところ、見事に「不可」をつけられた記憶があります。
それはともかく、勝俣氏のこの本で愉快なのは、アメノウズメノミコトをオリオン座に当てはめていることでしょう。オリオン座の三つ星を住吉大社の三神、底筒之男・中筒之男・上筒之男に当てはめた野尻抱影の説は、国文学界からも一定の支持を得ていますが、星座全体を日本の芸能の女神に見立てるのは考えていませんでした。
弟スサノオの乱暴のためにアマテラス大神が天の岩戸にこもって世界が暗闇になり、これを解決しようと神々が苦心するわけですが、アメノウズメは『古事記』で次のように書かれています。

天宇受売命、天の香山のささ葉を手草に結ひて、天の岩屋戸にウケ(桶)伏せて踏みとどろこし、神がかりして、胸乳をかき出で裳緒(もひも)をほと(女陰)に忍し垂れき。是に高天の原動(とよ)みて、八百万の神共に咲(わら)ひき。

西洋のオリオン座では三つ星をベルトとし、三つ星の下に縦に並ぶ小三つ星をベルトから下げた短剣と見ていますが、「ウズメ座」では裳の帯が三つ星に当たり、女陰まで垂らした部分が小三つ星に当たります。小三つ星の中央にあるオリオン大星雲(M42)が女陰の位置になります。天文学ではM42の内部で今も星々が生まれているとされており、この観点からも興味深いです。
アメノウズメは天孫ニニギノミコトの降臨にも随行し、サルタヒコノカミと対決します。勝俣氏はサルタヒコノカミをオリオン座と向かい合う牡牛座のヒアデス星団と見て、牡牛の片目に光る一等星アルデバランをサルタヒコの赤い目であるとしています。
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