前回の投稿で『天人五衰』を引用しましたが、そこに描かれた「壁」の表現が気になりました。

何か見えない現実とそこから利得を得ている見えない人間との間に介在して、不断にその双方を嘲笑している不透明な壁、生の匂いのきつい油絵具で隅々まで塗られ描かれた壁

『鏡子の家』で四人の男たちは清一郎の提案によって「決して互いに助け合わない」同盟を結びますが、そこにも「壁」が出てきます。四人はそれぞれの思いを「壁」に託します。中でも清一郎は「俺自身が壁に化けてしまう」ことを考えます。
清一郎は「油絵具の壁画に溌剌と姿を現わす人間」であり、「実はもっとも窮屈に機構にとらわれ、他人の支配に屈している」人間であると考えられます。商社マンと肉体労働者の違いは本質的ではないでしょう。筋肉は運動神経と結びついていて、頭脳と不可分に進化してきたものと思われるからです。
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