2020年07月

今までの私の精神生活に大きな影響を与えた人物というと、三島由紀夫、稲垣足穂、澁澤龍彦、手塚治虫、北山修の五人になると思います。しかし、この五人に惹かれる理由はそれぞれ違っていて、とても正確に説明することは出来そうにありません。
唯一言えることは、自分に近いという意味では澁澤龍彦が最も当てはまりそうだということです。足穂に惹かれる気持ちはあっても、とても自分は足穂にはなれないし、他の三人も同様です。ただ澁澤だけは自分に近い感じがあります。もちろん知識の該博さと言い、文章の見事さと言い、自分などは遠く及びませんが、心の動き方が似ているように思われるのです。
澁澤の『夢の宇宙誌』『幻想博物誌』は特に好きな作品です。私が子供の頃に惹かれた「宇宙」は天文学でいう宇宙ではなく、こうした宇宙だったかもしれません。この辺りは「花」と植物学の関係も含め、稲垣足穂も言及しているところです。
足穂は自分を高く評価した三島を最後まで罵倒し続けましたが、三島の友人で足穂を尊敬していた澁澤は「そういうところが稲垣さんの駄目なところだな」と冷静に見ていました。面白い話だと思います。
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三島由紀夫の『鏡子の家』は中期の重要な小説ですが、三島はこの作品でニヒリズムを追究しています。第三章では、世界の崩壊を信じるエリート・サラリーマン杉本清一郎のニヒリズムについて、童貞の日本画家・山形夏雄は拳闘選手の深井峻吉に次のように説明を試みます。

あの人は僕たち四人のうちで、誰よりも俗物の世界に住んでいるんだ。だからあの人はどうしてもバランスをとらなければならないんだ。俗物の社会が今ほど劃一的でなくって、ビヤホールでビールの乾杯をしながら合唱するような具合に出来ていた時代には、それとバランスをとり、それに対抗するには、個人主義で事足りただろう。・・でも今はそうは行かないんだ。俗物の社会は大きくなり、機械的になり、劃一的になり、目もくらむほどの巨大な無人工場になってしまった。それに対抗するには、もう個人主義じゃ間に合わなくなったんだ。だからあの人は、ものすごいニヒリズムを持って来たんだ。

この文章は、六十年以上前に書かれたものですが、今でも新鮮に感じられます。夏雄も富士樹海で世界の崩壊を幻視した後、神秘にひかれていくことになります。
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手塚治虫の『ブラック・ジャック』は良い作品だと思いますが、私は医者という人たちが好きなわけではありません。病気のときはお世話にならなければいけないので、あまり悪くいうことはできませんが・・
『ブラック・ジャック』では「医者でもひねくれた心は直せない」というセリフが出てきます。精神科医という人たちもいますが、手塚は精神科にはあまり興味がなかったようです。その点は三島由紀夫に似ています。
仏教で言われるように生・老・病・死は人間の基本的な「四苦」ですが、医学に代表される現代文明は「老」と「病」を排除しようとする傾向があります。「ピンピン、コロリ」が良いというわけです。三島も「老い」を怖れていました。
しかし「老」と「病」なくして「死」を理解することは不可能なことかもしれません。それならば「生」も理解できないでしょう。ここに現代の問題がありそうです。
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コロナは第二波の兆しを見せています。日常はいつ戻ってくるのでしょうか。それとも、もう戻らないのでしょうか。
マスクを付ける生活にも、慣れてしまいそうで怖いです。もちろんコロナに感染する方が遥かに怖いことは確かですが。
この事態は明らかに非人間的です。他人との接触を怖れるようになっては「人間」とは言えないでしょう。
考えてみると、コロナウィルス騒ぎは近代の資本主義の極限のように思えるのです。資本主義は人間を「個人」に分断し、家族も国家も崩壊させるものだからです。
安倍晋三のような末期的な総理大臣が出て、日本の国家が崩壊寸前になっているのも、第二次世界大戦の敗北のためだけではないでしょう。資本主義の大金持ちたちはあらゆる国家を敵視しています。日本を軍事占領しているアメリカも、彼らの仕掛けた暴動に苦しんでいます。
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