当ブログは三島由紀夫について書くことで始まりました。最近では触れる機会が少なくなりましたが、やはり三島のことは周期的に私の意識に上ってきます。
遺作『豊饒の海』、中でも第三巻『暁の寺』。その十三で本多繁邦が接するヘラクレイトスの雄渾な思想は、三島が最後に辿りつきたいと願った境地と思われます。

時間も空間も超越した領域で、自我は消えさり、宇宙との合一は楽々として成り、或る神的体験の裡に、われわれはあらゆるものになるのだった。そこでは人間も自然も、鳥も獣も、風を孕んでさやぐ森林も、魚鱗をきらめかす小川も、雲を戴く山も、青い多島海も、お互いに存在の枠を外して、融和合一することができた。ヘラクレイトスが説いているのは、そのような世界であった。

本多はこの思想に或る解放を覚えながらも、その光明に盲いることを怖れ、まだ自分の感性も思想も熟していないと感じ、離れてしまうのでした。
お読み頂き、ありがとうございますm(_ _)m