『豊饒の海』各巻の主人公の寿命が20歳であることについては、例えば伊勢の式年遷宮と結び付ける見方もありますが、『仮面の告白』に手掛かりがあります。
三島由紀夫は子供の頃は身体が弱く、友人たちにからかわれていました。
「二十歳までに君はきっと死ぬよ」
三島は「ひでえことを言いやがる」と思いながらも「奇妙に甘い感傷的な惑溺を、この予言からうけとった」ようです。
「賭をしようか」と畳み掛ける友人に「私」は「僕は、それなら、生きるほうに賭ける他はないじゃないか」と答えます。実に論理的です。
三島の「二十歳」は、また日本の敗戦(終戦)とも重なっています。この二つの理由から、安永透を除く三人の寿命は20歳と設定されたのではないかと思われます。
松枝清顕はよく分かりませんが、飯沼勲は満20歳より少し前、ジン・ジャンは満20歳の少し後に死んでいます。それで本多透は自殺を遂げていたら満20歳で死んだわけですが、未遂に終わったために満21歳になっても生きています。それでも三島は「透が本物かどうかは不明にしている」とテレビで語っていたそうで、気になるところです。
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