このタイトルは「人のふり見てわがふり直せ」をもじったものですが、三島はこの格言を皮肉たっぷりに解説します。
「この格言のできた時代は、よほど安定した世の中であって、今はこんな格言のずっと先まで突っ走ってしまっている・・「人のふり見てわがふり直すな」と訂正すると、これは正にモダンな格言になる。「あの人があれだけの恰好をするんだから、私だってこれぐらい平気だわ」というのがこのモダン格言の精神です」
また三島は「コクトオが書いているフランスの中学校の寄宿舎の話」によると、先生が友だちの我儘を訴えた生徒たちに「あなた方は自分たちの問題を自分たちで処理する習慣をつけなければいけません」と言ったところ、あくる朝、その我儘な生徒が縛り首にされている死体が発見されたという話を取り上げます。そして先生がそのとき「けしからんね。その子をみんなで縛り首にしてみなさい」と言ったらどうだったろうか、と問います。
三島の答えは「おそらく子供たちは、そこで自分の「悪」の能力の限界を発見して、その自覚から、子供なりの理性に目ざめて、そんなことはできないだろう」というものです。
私は子供によって必要な対処は違うだろうと思います。先生が言った言葉は表面的には正しく、三島が仮想するのはとんでもない言葉ですが、そういう対処が有効な場合もあるように思われます。
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