澁澤龍彦は「オドラデク」というエッセイで、カフカの『家長の心配』に出てくる糸巻、または独楽(こま)に似た奇妙な物体オドラデクについて考察しています。この物体は生き物のようでもあり、妖精のようでもあり、澁澤によると「現象の背後にある物自体が、カフカの思惟を通過することによって、突然、目に見える具体物となって顕現したかのような感じ」なのだそうです。
オドラデクという名前の由来については、スラヴ語、あるいはドイツ語とも言われるがはっきりしないと説明されています。次元の低い私などはむしろ日本語で「踊り木偶(でく)」「踊る木偶」と解釈すると面白いと思いましたが、さすがに澁澤はそんなことは書いていません。
澁澤はオドラデクのなかに、目的と意図のある生殖活動(結婚生活)の世界から締め出された、オナニズム(独身生活)の表象を見ています。澁澤自身は結婚していましたが、彼の文章は毒があって面白いです。
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